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 ■vol.10 途上国の手洗い事情

(キーワード:新型コロナウイルス感染症、洗浄、途上国)


新型コロナウイルス感染症が世界中で猛威を振るっています。感染症が広がるにつれ、潜在化していた課題が次々に表面化してきています。その一つに途上国の手洗いに関する課題があります。未来洗浄研究会では「洗濯」というテーマを通して、日本と他の国々ではどのように洗濯事情が違うのかということも今後取り上げていく予定ですが、新型コロナウイルスの影響から洗浄における課題が見えてきたので、本ブログで取り上げてみようと思います。

水と石けんを使って手洗いすることは新型コロナウイルスの感染予防として不可欠な手段の一つです。私たち先進国に住む人にとっては、難しいことではありません。しかし世界人口の40%、約30億人が自宅で水と石けんで手を洗えないと報告されています1。また、世界全体の40%の家庭、47%の学校、43%の保健医療施設に水と石けんを使うことのできる手洗い設備がなく、後発開発途上国の人口の約4分の3が水と石けんを使うことのできる手洗い設備を使えないと報告されています2

世界の都市部人口の3割にあたる約10億人が住んでいるスラムのような環境には、排水や下水施設が少なく、安全な水へのアクセスが確保されていません。約50万人が暮らすケニア・ナイロビのムクル・スラムに住む8人家族は、家の中に電気や水道が通っていないため、1日の収入400ケニア・シリング(約404円)から毎日バケツ10杯分の水を50シリングで購入していますが、水が買えない日もあると言っています3

温暖化が影響を及ぼしている地域もあります。バングラデシュ西南部、クルナ県の村では気候変動の影響が大きく、海面上昇による地下水の塩水化が進んでいるため、安全な水の確保が困難になっているとの報告があります。土壌の質や作物の収穫、生物多様性にも影響を及ぼし、人々の健康が脅かされているそうです。また管井戸と呼ばれる地中深くから水をくみ上げる井戸の水で洗濯や皿洗い、沐浴をしているそうですが、その水の塩分濃度は高く、またヒ素や鉄分で汚染されていることもあるそうです4

新型コロナウイルスの感染拡大により、私たちの生活に不可欠な安全な水にアクセスできない人たちが多くいることが浮き彫りになりました。ウイルスは人の移動で感染が拡大しています。より多くの人が安全な水と石けんへのアクセスできるようにすることが、私たちを守ることにも繋がるのではないかと思います。