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 ■vol.14 洗濯機から見る私たちの生活

(キーワード:洗濯、洗濯機、ライフスタイル)


私たちの生活に洗濯機は欠かせなくなりました。その洗濯機が世界で初めて発明されたのは今から約100年前の1908年、アメリカのアルバ・ジョン・フィッシャーという人が円筒槽の回転によって汚れを落とす「たたき洗い」を電化したのが始まりだそうです1。この洗濯機はThorブランドとして販売され、それを1922年に三井物産が輸入し日本に洗濯機が入ってきました2。1930年に国産一号機が東芝から販売されていますが、当時の洗濯機は小学校教員の初任給が約50円だったのに対し、370円と高価だったため、一般家庭には中々普及しなかったようです3。一般家庭に普及したのは戦後の1953年、「噴流式」と呼ばれる渦巻き水流を起こして洗う洗濯機が発売されてからだそうです4。その後脱水槽が加わったり、全自動になったり洗濯機はライフスタイルとともに開発が重ねられてきました。

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世界初の電気洗濯機(参照:東芝未来科学館ホームページ)


現在では洗濯機の大容量化が進んでいるそうです。日本では洗濯機全体の販売台数の8割以上を縦型洗濯機が占めていますが、その縦型洗濯機の容量「10kg以上」の台数構成比が12年には2%だったのに対し、17年には約24%まで増えているとのことです5。縦型洗濯機を所有している共働き子育て世代を対象にパナソニックが実施したインターネット調査によると、1日あたりの洗濯回数で平日に2回以上洗濯する人が約45%、休日に2回以上洗濯する人が約59%となっており、共働き世帯が増え休日にまとめて洗濯する家庭が増えていることが洗濯機の大容量化を進めていると分析しています6

一方、洗濯機の利用に関するインターネット調査によると、洗濯機を購入する時に重視する機能として「省エネ(節水、節電等)」「大きさ・容量」が各6割、「洗浄力(汚れ落ちがよい)」「運転音の静かさ」が各5割となっていました。エネルギー効率が良く、洗浄力の高い静かな洗濯機が売れ筋のようです。縦型洗濯機の方がドラム式より売れているのは、価格差の問題以外にも、ドラム式が設置により多くのスペースを要するからではないかとの分析もあります7。最近の清潔志向に応える洗浄力の高さと同時に、日本の限られた住居スペースで騒音が少ない洗濯機が望ましいというのも理解できます。

また最近ではコインランドリーが多様化していきています。靴や布団などの家で洗えないものをコインランドリーで洗う人も増えているそうです。スマートフォンで洗濯機の空き状況が家から確認できたり、待ち時間に愛犬をシャンプーできる場所が設置されていたり、洗濯・乾燥・たたみの代行サービスまであるそうです8。さらにカフェ併設のコインランドリーまであり、待ち時間に焼きたてのパンと美味しいコーヒーを楽しめるようになっている場所もありました9。家庭にはない大型の洗濯機と乾燥機で一気にまとめ洗いをしながら、待ち時間をうまく使える工夫がされています。コインランドリーの施設数は1997年から2017年までの20年間で倍増しているそうです10。清潔志向の高まりもあり、布団や毛布を丸洗いしたいという人も増えているのかもしれません。

洗濯機が発明されてから、私たちのライフスタイルの変遷とともに洗濯機も変化してきました。ほぼ毎日洗濯すると答える日本人が多い一方、仕事と家事の両立に対応したまとめ洗いができる洗濯機や、時間のない人に対応した洗濯代行サービスまで今はあります。私たちのライフスタイルや価値観の変遷と洗濯が切っても切れない関係であることがよくわかります。洗濯の環境負荷を考える時に洗剤や洗濯機だけでなく、コインラインドリーなども視野に入れる必要があるのかもしれません。