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 ■vol.19 衣服の役割を考える「服育」

(キーワード:衣服、ライフサイクル、繊維)


皆さんは衣服が生活の中でどういう役割を果たしているか考えてみたことはありますか?そもそもなぜ衣服を着用するのか、どういう衣服を着用するのか、どうしてその衣服を着用することにしたのか等、考えてみると色々な段階があることに気づきます。

その衣服の大切さや役割について理解し、日々の暮らしに活かす力を養う取り組みとして「服育」というものがあります。大阪の繊維専門商社チクマが提唱し始まった取り組みだそうです。衣服は衣食住の一つでありながら、おしゃれの観点から語られることが多く、生活を支えるという様々な役割を担っているものであることを認識することは少ないと服育net研究所は書いています1。また衣服の役割として下記の4つの観点に分けて説明されています2

1. 自分を「守る」服/健康・安全の観点:暑い日に涼しく、寒いに暖かく過ごせるデザインや素材、交通事故のリスクを減らす色やデザイン、動きやすいデザインや素材など、防護性のための衣服について考える。

2. 自分を「伝える」服/社会性の観点:衣服の着こなしや色・デザイン・素材、オンタイムとオフタイムの衣服の違いなど非言語コミュニケーションとして自分を伝えるための衣服を考える。

3. 環境を学び「行動」へ移す服/環境の視点:廃棄される衣服や原料、縫製、着用、リサイクルというライフサイクルの中での環境負荷を振り返り、環境に影響を与える存在としての衣服について考える。

4. 「文化理解」に役立つ服/国際性:他国の伝統衣装からその国の歴史や特徴、価値観について考え、衣服から日本や他国について学ぶ。

このように衣服の役割を再考してみると、おしゃれをするだけの衣服ではないことがよくわかります。「服育」という活動は学校でも展開され、制服のライフサイクル(原材料→縫製→着用→リサイクル→廃棄)までの環境負荷について、CO2の排出量を見えるようにしたすごろくも学びのツールとしてウェブサイトで提供されています3。ポリエステルが何から作られるのか、工場で糸を作って、その糸が布になり、生地を染められたりする中で制服が出来上がる様子がわかるようになっています。またその制服がどのようにリサイクルされるのか、どのようにしたら上手にお手入れができるのか、大切に制服を着用する知恵も得られるようになっています。

今ではその「服育」の活動も少しずつ広まり、ユニクロや三陽商会などの企業も取り組んでいるようです。三陽商会では小学校の家庭科の授業にデザイナーやパタンナーを派遣し、服づくりのプロセスを説明したり、残布を使ったバッグ製作したりするワークショップを実施しています4。また服育授業動画をエコギャラリー新宿と共同で製作し、綿から衣服ができるまでの過程を説明するとともに、服やものを長く使う大切さを理解してもらうためにアップサイクルの取り組みとして、うちわを作るワークショップも実施しています5。素材を使ってまた別のものを生み出すアップサイクルという考え方は、もったいないという日本にある考え方とよく繋がるコンセプトだと思います。

またユニクロではMy First Outfitという子どもが一人で服選びに挑戦できる体験型サービスを無料で提供しています6。スタッフから服選びのポイントなどを学んだ後、自分で買い物かごを持って服を選びに行き、組み合わせを考えて、試着して決めたものを両親にお披露目するというサービスです。普段は親が子どもの衣服を決めている家庭では、子どもが自分で選ぶものに対して新しい発見があるようで、次からは自分で選ばせてあげようというコメントがありました。着用する衣服に興味を持つという意味で、家庭における「服育」になっている取り組みだと思います。これがお洒落だけの衣服でなく、素材やお手入れなど長く使う方法についても話を展開していけるとより良いのではないかと思います。

洗濯する対象である衣服を大切に使い続けることも洗濯の環境負荷を減らしていくことに繋がります。衣服がどのように作られているか知ることや、素材や衣服のメンテナンス方法に気を配ることは資源を大切に使うことにも繋がります。またメンテナンスの中でどのように洗濯をしたら良いのか、どのくらいの頻度で洗濯をするべきなのか、服育という考えを膨らませて当研究会でも議論を広げていけたらと思います。ぜひ服育net研究所のウェブサイトをチェックしてみてください。